プロジェクトストーリー

長年愛され続けてきた名車、日産スカイラインGT-R（BNR32）。その圧倒的な走りと存在感に魅せられ、今なお多くのファンが大切に乗り続けています。
しかし、この車もすでに生産終了から30年。各部品の経年劣化や供給終了により、「乗りたくても乗れない」という現実に直面するオーナー様が増えてきました。中でも深刻なのがフューエルセンダーユニット（フューエルレベルセンサー）の絶版。今回、部品復刻のご依頼をいただいたH様もまさにこの部品に関するお悩みを抱えておりました。

【不具合部品の確認】

お困りの部品はこちらのフューエルセンダーユニット（純正品番：25060-05U00）。この部品はガソリンタンクに直接取り付けられ、通常はタンクの蓋としての重要な役割も果たしています。しかし、長年の使用による劣化でひび割れが発生し、ガソリン漏れの原因となってしまうとのこと。R32GT-Rオーナー様の間では定番のトラブルのようです。

 

腐食したノズル部分には、大きな亀裂が確認できます。このように金属と樹脂が組み合わさった複合パーツは修理が難しく、これまでは部品を丸ごと交換するしか方法がありませんでした。しかし現在、この部品はメーカーからの供給がすでに終了しており、状態の良い中古品もなかなか出回りません。そのため、R32 GT-Rは「車検に通らない」「最悪の場合、火災につながる」といった深刻なリスクを抱える状況になっています。こうした現状を受け、私たちはこの部品を一から復刻し、全国のオーナー様に届けるプロジェクトを立ち上げました。

【意匠調査の実施】

まず最初に行うのは「意匠調査」です。自動車部品に限らず、多くの工業製品は、形状・模様・色彩などのデザインが「意匠権」として保護されています。この意匠権を確認せずに部品を複製してしまうと、権利の侵害となり、法的なトラブルに発展する恐れがあります。そのため、私たちはまず弁理士に調査を依頼し、該当部品が意匠権に抵触しないかを確認します。今回のフューエルセンダーユニットについても、事前に調査を実施した結果、複製が可能であることが確認できました。

【不正競争防止法について】

部品の復刻を行う際には、不正競争防止法における「周知表示混同惹起行為（第2条第1項第1号）」に該当する可能性があります。これは、他社の製品やブランドと誤認されるような表示を行うことで、消費者に混乱を与えてしまう行為を指します。こうした法的リスクは非常に複雑で専門的な判断が必要となるため、復刻にあたっては必ず知的財産に詳しい弁護士と事前に協議を行い、リスクを最小限に抑えた方法を選択することが重要となります。

【サプライヤーの選定】

日本国内では小ロット生産に対応可能なサプライヤーを探すことは難しく、海外製造へと切り替えることとなりました。より最適なサプライヤーを絞り込むため現地へ足を運び、品質確認や価格交渉を行います。現在、台湾や中国を中心とした海外サプライヤーとの繋がりを深めています。

【目標は販売価格10万円以下】

R32 GT-Rのフューエルセンダーユニットは、フタ・ノズル・レベルセンサー・フロート・液面センサーなど、複数の部品から構成されています。これらすべてを新たに製作しようとすると、金型製作だけで数千万円の費用が発生し、小ロット生産ではとても回収できるものではありません。そこで今回は、既存の金型の中から流用できるものを選び、必要最低限の金型だけを新たに開発するというコスト効率の高い方法を採用。蓋部分の厚みとノズルの長さが純正部品と異なりますが、販売価格を大幅に圧縮することができました。なお、センサーについては、純正品と同じ抵抗値に設定し、これまでと変わらず安心してご使用いただけるよう設計しています。

また、小さなコネクターの複製だけでも非常に手間とコストがかかるため、フューエルセンダーユニットの一部のコネクターは汎用品に置き換えることにしました。これに伴い、燃料ポンプまでの配線もすべて新しく作り直します。

【開発サンプル部品の取り付け】

完成したサンプル品をもってH様のガレージへ。そこにはレストア中の32GT-Rが大切に保管されていました。早速問題の部品を交換します。

 

まずはじめにフューエルポンプを取り外し、センダーユニットに繋がる配線を新品に交換します。

 

そしてメインのフューエルセンダーユニットを取り付けます。純正品と比べパイプの長さが異なりますが、ホースの取り付けに支障はありません。

 

無事にタンクに収まり、ホース類や配線の接続も完了です。

 

燃料ポンプ・燃料計の作動も問題ありません。

 

エンプティーランプの点灯も無事に確認できました。

 

【ついに完成！】

約1年の開発・試作期間を経てR32GT-Rに使用可能なフューエルセンダーユニットが完成しました。本体の材質は純正品と同様、強度と耐ガソリン性に優れるPOMです。当初目標としていた販売価格10万円以下もクリアし、あとは最後の難関を突破するだけとなりました！

【皆様のお力を貸してください！】

生産ラインを稼働させるにはまとまった資金が必要となることから、目標金額に到達するまで製造を開始することができません。まずはより多くの32オーナー様に情報が行き渡るよう皆様のお力が必要です。プロジェクトページ上部にあるSNSシェアボタンから情報拡散にご協力ください。目標金額達成後、最短1〜2ヶ月で発送開始となります。

【生産個数について】

今回の復刻プロジェクトは200個限定の生産となります。完売後の追加生産は一切行いませんので、この機会にぜひ新品部品の確保をご検討ください。

【復刻リクエストの募集】

国産車・輸入車問わず復刻したい部品のリクエストを随時募集しております。お気軽に運営公式LINEからお問い合わせください。LINEのご登録はこちら

リターン紹介